上下論争 ―side:ロイ・マスタング―

何で私が下にならねばならんのだ。
年齢、経験、身長…どれをとっても私の方が上だと言うのに――


決戦の日が来た。
場所は私の家。
ホテルと言う案もあったのだが、中尉に止められてしまった。
曰く、被害を最小限に抑えるためだそうだ。
そもそもこうなってしまったのには色々と事情があった。
数ヶ月前、私が長い間思いを寄せていた鋼のとようやく恋人となれた。
思いを通わせることができたのは中尉たちの協力があったこそだろう。
鋼のは素直ではないからな。
で、あるからして自体の混迷は私には一切責任が無いはずだ。…はずだ。
まあ、取り敢えずは私達の付き合いはなかなかうまくいっていた。
喧嘩も多少はあったが大したことはあるまい…確かに順調だった。
だが、問題が一つあった。
つまり、どちらが上か下かと言うことだ。
揉めに揉めていたため、私と鋼のは未だにキスまでの関係なのだ。
さすがにお互いこの硬直状態は限界だ。
そういうわけで、私達は中尉たちの助言を受け、今日こそ決着をつけようということになったのだった。


シャワールームを出た私は先にシャワーを終えた鋼のの待っている寝室へ向かった。
「おせーよ。」
「それはすまなかった。」
開口一番に放たれる悪態にも動じず私はベッドに座っている彼の隣に腰を下ろす。
今回の決戦のルールは錬金術を使わないこと。
これを言い出したのは確か少尉だったな。
片付けに呼び出されるのはもう懲り懲りだとか何とか…今思うと失礼極まりないヤツだな。
少尉はともかく、今回はきっちりと話し合いで決めなければならない。
さて、どう切り出そうか。
刺激を与えては逆効果になるだろうし、下手に出過ぎてもいけない。
程よく此方の優位を知らせ、向こうを挫かせる。これは中々難しい。
などと私が考えを巡らせていると、鋼のが痺れを切らしたように口火を切った。
「オレは下、嫌だぜ。」
「私だってお断りだ。」
私は即答した。
当たり前だ。簡単に頷けるわけが無い。
しかし、これでは先に進めない。
私は密やかな溜め息を溢し、
「いいかね…そもそも私と君とでは経験に差がある。こういった行為において、やはり経験のそれなりにある私が上であるべきだろう。」
一言一句ゆっくりと言い聞かせるように。
「経験って言ったって女とだろ。だったらオレとあんたについてなら関係ねぇだろ。それにそっちの知識はあちこち旅してるオレの方が詳しいに決まってる。」
が、説得は一刀両断された。
確かに私も彼も男同士の行為の経験はない。
そういう意味では彼の言う通りだが、はいそうですかと言うことはできない。
大体にして30近くの男を喘がせてて何が楽しい。
「君は私の喘ぎ声など聞きたいのかね?」
「聞きてぇよ。」
「ふざけるなっ!」
あっさりと肯定する鋼のの言葉に思わず頭痛を覚えた。

それから続く、いつものパターンの不毛な言い争い。
このままでは決着がつく気配など全くない。
やはり最終手段は押し倒した方が勝ちと言うものだろう。
私は深く溜め息をつくと仕方がないのだと言うように鋼のへ手を伸ばす。
彼の左手を掴み、
「まあ、こういうことは試した方が早い…」
言いながらベッドへと押し倒そうとした。
そう、したんだ。


「……」
「……どうかした?」
にこやかな鋼のの笑顔が何故か、上方にあった。
更に、彼の手首を掴んでいたはずの私の手はいつの間にか彼が練成した枷に嵌められている。
つまり、ピンチだった。
「…鋼の。」
「何?」
「やはり、こういうことはちゃんと話し合ってだね――」
出来るだけ刺激しないように微笑みながら言うが、頬がぴきぴきする。おそらく、引き攣った笑みになっていることだろう。
「大佐が言ったんじゃん。『こういうことは試した方が早い』ってさ。」
「いや、しかしだね…」
「往生際がわりーよ、ロ・イ?」
「ひっ…」
にっこりと形容できそうな、けれど目が一切笑っていない彼の笑顔が逆に私の恐怖心を煽った。


まあ、その後のことは推して知るべし。

いや、正直推しても知っても欲しくないんだがね…


 


ロイサイドでした。
随分前に半分くらいネタで書いていたものを加筆修正してみました。
ここまでギャグに走った話って中々書かないので楽しかったです。

あ、意味の分からなかった方は申し訳ありません。(笑)

「side:エドワード・エルリック」は下のアイコンからどうぞ。

(07.07.15〜07.11.20)