X’mas
「君はクリスマスと言うものを知ってるかね?」
エドワードの宿を突然訪ねてきたロイは開口一番にそう言った。
あまりの唐突さ加減に今日図書館で見つけた本をベッドの上に胡坐をかき、読んでいたエドワードは呆気に取られ間の抜けた声を返す。
「は?」
「だから、クリスマスを知ってるかと聞いているんだ。」
そういう意味で問い返したんじゃない…
口には出さず、胸中で呟きを落とす。
とりあえず、付き合ってやらないことには話が進まないと投げやりな調子でエドワードは答える。
「知らねーよ。」
「そうか。」
「なんなんだよ。」
「クリスマスと言うのは12月25日、つまり明日なんだが…キリストと言う神様の誕生日なのだそうだ。」
なんなんだ、ってのはあんたの事だ。
噛み合わない会話に苦虫を噛み潰したかのような表情でパタンと本を閉じた。
それからドアの前に立つロイに向き直る。
「ふーん…あんたそんな神様とか信じてんだ。」
棒読みともいえる口調で問い返せばさらりと、
「いや、全く。」
と返ってくる。
まあ、錬金術師――つまり科学者である彼が神などと言う非現実的な物を信じているとは端から思っていなかったが…
「ところで君はサンタクロースと言うものを知ってるかね?」
疑問をぶつけようと口を開いたエドワードを遮り、更に脈絡もない問い掛けをするロイ。
「なんなんだよ、今日のあんたは…」
溜め息交じりに呟きを零す。
普段からロイの行動は理解しがたい物があったが今日の彼は特に理解できなかった。
「知ってるかね?」
「はいはい、知りませんよ。」
それでもなおも問いかける彼の声に深く溜め息を吐き応える。
「サンタクロースと言うのは赤い服に白い髭を生やした老人の名前らしい。トナカイが引くソリに乗って夜空を飛んで、いい子にしている子供の所にやって来るそうだ。そして枕元にプレゼントを置いていく。」
「お伽話?」
ロイの語った話は絵本にでも出てきそうな物語だった。
小さな子供ならば目を輝かせ、そういった話を強請るのだろう。
だが、生憎エドワードはそこまで小さい(身長の事ではなく)子供でなければ、ロイと同じく非現実的な物など信じない錬金術師だ。
「いや、風習のような物だな…ようは子供がその日を口実に大人からプレゼントを貰う。恋人同士プレゼントを交換するとも聞くが…」
どうやら絵本ではなく行事の一端らしい。
「あ、何かの記念日かなんかなわけ?」
エドワードが何気なくした問いかけに意味深げな笑みをロイは浮かべた。
何処となくシニカルな笑みにエドワードの眉が顰められる。
「サンタが来るのはクリスマス・イブの夜……つまり、クリスマスの前夜だそうだ。」
クリスマスと言うのは先ほどロイが言っていた神様の誕生日とやらだろう。
その日の前夜にサンタクロースが来るらしい。
「それってなんとかって神様と関係があるわけ?」
「さあな。私は信者ではないのでそこまではわからないな。まあ、前夜祭として24日に騒ぎ祝い、当日は厳粛にということだろ」
「そんなんじゃ、親子にしたって恋人にしたってメインは前夜だろ。」
「そういうことだな…当日、神の誕生日を祝い祈る者など本当の信仰者だけだろ。イベントとしてプレゼントを楽しんでいるものの方が多いだろう。」
くつくつと笑いを漏らすロイはまるで神を嘲っているかのようだった。
神様の誕生日よりもその前夜に行われる祭りに人々は目を奪われる。神の誕生は二の次になってしまう。
人と言うものはそんなものだ…風習と言うものはそんなものだ。
重要なのは神様などではなく、人と人の繋がり…
必要なのは神様などではなく、互いの笑顔…
携帯で会話だけ、打ちました。
牛先生がクリスマスもバレンタインも鋼の世界にはないと言っていたのですが…
まあ、お隣の国にならあってもいいかなーと思って…
客観的にクリスマスを見る二人、ってな感じで。
もう少し続くんですが、長くなる上に続けにくかったので切りました。
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(05.12.20〜06.01.26)