背徳

ぴちゃり…
密やかな水音が下方から耳へ届き、同時に快楽が駆け抜ける。
赤い舌がそれの裏筋をなぞり、輪にされた指が竿を扱く。
先端を舌先が擽ると堪らず腰が揺れ、しがみつく手に力が篭る。
それによって身体を預ける黒い皮張りの椅子が僅かに軋みをあげた。
「ふ……、ッ…」
もうどれくらいの間、こうして自身を彼に嬲られているのだろう。
熱を高められ、何度吐き出したかも考えられないほど私の意識は霞んでいる。
「あっ、……く…」
生理的な涙に視界が揺れ、脚の間に座り込んでいる金色が歪んで見える。
私は無意識に手を伸ばし、その金色に触れる。
さらさら指をすり抜ける金糸。
「何?」
「は、――…いや、何でも…ぁっ…」
ぱくりと温かく湿る咥内にそれを導かれる。
咽喉の奥で締め付けられるような感覚にぐんっと自身が肥大した。
堪らず指に絡めていた金糸を強く引っ張ってしまう。
「っ…!?」
「うあっ…――」
髪を引かれ、驚いたのだろう彼が私の雄に歯を立てた。
自身に加えられた鋭い痛みが快楽へと変換される。
ゆらゆら揺れる瞳を彼へ向けると、私を上目遣いで見上げ非難を示す彼のそれとぶつかる。
焔を宿す美しくも暗く深い金色の瞳…
一瞬、その瞳に吸い込まれていく様に錯覚する。
その瞳が細められる。
ジュ…
張り詰め、今にも弾けそうな自身が彼の咥内に出入りを繰り返す。
犯しているのか、犯されているのか…
快楽に蝕まれる思考回路はもはや役に立たない。
「はあっ…ふ…――」
びくびくと自身が震え、限界が近い事を知らせる。
彼に向けたままの視線。
その先にある彼の瞳が不意に妖しく揺らぎ、瞬間、先端を強く吸いあげられる。
「ァ、ああっ…!」
その刺激に耐えきれず、私は彼の口腔内に昂ぶる熱を放ってしまっていた。


夜も更け行き、人々が眠りにつく時刻。
書類をついつい溜め込んでしまった私は仕方がなしに執務室で残業をしていた。
流石に朝までにこれを片付け終えなければ、優秀な部下の素晴らしい射撃の腕前が披露されることとなる――私を的として…
それだけは絶対にごめんだ。
だが、有能な私が本気を出せばこの程度の仕事などあっと言う間だ。
残りの書類もあと僅かとなった頃、私は一息いれようと手をとめた。
私の漏らした溜め息が室内に染み入る。
夜半を過ぎた辺りはしんと静まっていた。
夜勤の者が働いているのだろうが奥まったところに位置する執務室には昼間と違い彼等の活動は伝わってこない。
椅子に凭れながら指で目頭を揉みほぐす。
再度深く息をついた時、微かな足音が聞こえた気がした。
見回りのものだろうかと首を傾げていると唐突にノックも無く扉が開かれる。
軍人の性か。
私は反射的に身構えていた。
だが、開かれた扉から姿を見せたのは私の命を狙ってやってきた侵入者等ではなかった。
そこに佇んでいたのは数時間前にこの執務室を後にしたはずの少年だった。
「なんだ、鋼のか…」
肩に入っていた力を抜き、椅子に凭れ直す。
少年はいつも通り上下黒い服を着、その上に赤いコートを纏っている。
ただ違うのは何時も綺麗に三つ編みされている金髪がほどかれ、背に広がっているということ。
「こんな時間にどうかしたかね?」
返答はなく、代わりにカチッという錠がかけられた音が耳に届いた。
私は思わず苦笑を浮かべる。
カツカツと左右ばらばらの独特の足音が近くと私は皮張りの椅子を少し後ろに下げ、それから立ち上がろうかと腰を浮かせた。
「いい。座ってろよ。」
彼の言葉に止められ、浮かせた腰を再び椅子に沈める。
「鋼の?」
怪訝に思いながら傍らへやってきた彼を見上げる。
普段見下ろしてばかりの彼をこうして見上げていると言うのはなんだか不思議な気分だ。
「なあ…暇?」
私の肩に手を置き、彼が顔を近付けてくる。
真っ直ぐに此方を見つめる彼の瞳を見返しながら、軽く肩をすくめる。
「この書類の山を前に君は私が暇な風に見えるのかね?」
デスクの上に積み上げられた書類に視線を向け示す。
彼の瞳が同じ様に書類の山を見た。
しかし、すぐに瞳はそらされ此方に向けられる。
「見える。」
きっぱりとした口調で言われれば思わず笑いが漏れる。
山の大半は処理済みのものだし、彼の言葉もあながち間違いではないか。
「わかったよ…」
溜め息交じりに応えれば、目の前にあった金色が更に距離を縮める。
唇に触れる柔らかい彼のそれにゆっくりと瞼を落とした。
何度も啄む様に繰り返される軽い口付けは羽根が撫ぜていくようで心地よい。
その口付けのように彼の解かれた金糸が私の頬を撫でるのが擽ったかった。
安堵感が身を包み身体から力が抜け、私は身を椅子に深く預ける。
「ん……」
彼の舌が私の唇をなぞり、咥内へと侵入を果たす。
ねっとりと絡められる舌に私は自ら進んで舌を差し出し、絡めていく。
隅々までをじっくり弄られると小刻みに身が震え、次第に息が上がる。
私は震える指先で彼の腕を掴み、限界を訴える。
すると名残惜しげにちゅぷりと音を立て彼の唇が離れていった。
漸く解放された唇は熱くて、荒い呼吸で酸素を肺へ補給する。
弛緩しきった身体を椅子に預け、彼をぼんやりと見つめる。
彼はそんな私の前に膝をつき、そして脚を開かせその間に割り込んできた。
かちゃりと金属の擦れ合う音とともに彼の手がボトムのベルトを外していく。
「鋼の…っ」
ようやく彼がしようとしていることを悟った私は慌てて彼の左手を押さえる。
が、それを咎めるように空いている右手で中心をきゅっと握りこまれ、突然の刺激に私の身体が大きく跳ねる。
「ぁあっ…!」
そのまま衣服越しに中心を揉みこねられ、徐々に自身が熱を持ち始めるのを感じる。
真っ直ぐな金色の瞳が快楽を覚える私の相貌に向けられる羞恥に顔を背けた。
既に添えているだけだった私の手を解き、彼が殊更ゆっくりと私のボトムを寛げていく。
顔を背けながらも痛いほどに注がれる視線に煽られ熱が上昇してしまう。
「大佐、こっち見ろよ。」
痺れを切らした彼の声に私はびくりと身体を強張らせた。
こういった行為の最中、低く命令口調で発せられる彼の言葉に私はどうしても逆らえない。
「大佐…」
再度、促すように呼ばれ、恐る恐る彼へ視線を向ける。
すると予想通り此方を見つめる金色の瞳と視線が絡み合い、捕えられてしまった。
こうなってしまえば、私はもう彼から逃れることなどできない。
こくりと唾液を嚥下する音がやけに大きく耳に届いた。
取り出された自身はすっかり勃ち上がり、先端を濡らしている。
彼の生身の指がそれに絡められ、上下に雄を扱く。
与えられた直接的な愛撫に身体が震えた。
「ぁ、まっ…」
彼の唇が開き、私の制止の声を封じ込めるかのように私のモノを頬張った。
温かく濡れた彼の咥内はあまりに気持ちよくて、深く甘い吐息が漏れる。
彼の舌が裏筋をなぞり、根元からゆっくりと舐め上げる。
感じる点を逃さず刺激され、快感に耐えるように椅子の肘掛けを握り締める。
ぎしっと革張りの椅子が悲鳴を上げ、私の咽喉から細く空気が漏れる。
溢れ出る蜜と彼の唾液で自身は濡れ、いやらしく水音を引き起こしていた。
「は、ァ……ぅん、…――」
早くも限界が近づく私のそれを舐めながら彼がくすりと笑いを漏らすのが振動で伝わる。
その羞恥に私の頬はきっと赤く染まっていることだろう。
「アンタってさ、口でされるの弱いよね。」
「口に…入れたまま、喋るなっ…」
咥えられたまま口を動かされると硬い歯と生温かな舌がそれを刺激し、ぐんと自身が肥大してしまう。
そんな私のモノを熟れた柘榴の様に赤い舌が這う。
左手で袋を捏ねつつ、竿を行き来する軟体生物のような舌。
先端から溢れる白い蜜がその舌に掬われていく様はあまりにいやらしく淫らで…
「なあ、何でアンタがこれに弱いか当ててみせようか?」
態とらしく先端に唇を押し当て、振動を伝えつつ彼がそう囁く。
その口許には雄の匂いのする笑みが滲んでいた。
目を見開き、私は首を横に振る。
けれども彼は残酷なその言葉をとめようとはしない。
「あんたはさ…」
「……やっ……ん、あ――」
彼の声に重ね、私は悲鳴のように声を上げる。
だが、彼の止まらない愛撫によってその声は喘ぎに摩り替わってしまう。
「子供のオレに一方的に乱されるのが…」
張り詰める自身を擦りあげる彼の手は徐々に激しさを増し、先端を抉る舌が理性を壊していく。
身も心も追い詰められ、崖っぷちに立っているような思いだ。
「ぁ…止めてくれっ…」
頭を振り乱し、肘掛に爪を立て快楽に流されまいと必死に抗う私をいとも簡単に彼は突き落とした。
「背徳的でイイんだろ?」
どくん、と自身が脈打つ。
熱い飛沫が込みあげ、彼の咥内へと一気に放った。
彼が咽喉を鳴らし私の吐き出した液を飲み込む音が響く。
私は余韻で微かに身を震わせながら、羞恥と抉られた傷に頬に涙を伝わらせる。
「オレ、あんたのその表情が好き…」
溢れた涙を雄の匂いの残る舌先が拭う。
私は薄く涙のフィルターで歪む視界の中、彼の相貌を見つめぼんやりとしていた。


『あんたはさ…子供のオレに一方的に乱されるのが…背徳的でイイんだろ?』

彼の先ほどの言葉が耳に焼き付き離れない。
それはきっと彼の言葉が真実だからだろう。
彼と身体を重ねることは酷く私に背徳感を齎す。
それでも、私も彼も理性をなくす行為においてはそれが曖昧に思えていた。
だが、こうして一方的に私ばかりが乱される時、それは津波のように私を襲う。
大人顔負けの才能があろうと彼が子供であることは変わらない。
私はそんな彼をこの淫らな行為で穢しているのだ。
それがたとえ彼の同意の元であっても、大人である私が許容していいものではないはず。
私は一度彼を軍の狗という闇へ堕としている。
にも拘らず、更に私は彼をもっと深い闇に引きずり込もうとしているのだ。
眩い金色の髪と瞳が視界の端で煌めく。
私はこの光を穢す存在――

汚い悪魔の様な…


「あんたが今考えてること、わかるぜ?」
彼の声が私を現実に引き戻す。
ふっと金色の髪が流れるのが視界を過ぎったかと思うと、目の前に輝く金の瞳が突きつけられた。
その色があまりに深くて、私は金縛りにでもあった様に動くことが出来なかった。
硬直したままの私の中心に冷たい鋼の指が絡み、ゆるゆると上下に動き出す。
達したことで弛緩していた身体が震えた。
「はがね、のっ…」
彼は私の制止の声を無視し、再び私自身を口腔内へ導いていく。
彼の不穏な色を宿す瞳に魅入られ、視線をそらすことの出来ぬ私はただ快楽に流されるしかなかった。
すっかり力を取り戻した自身が先端から蜜を溢れさせる。
その蜜をちゅっと音を立て吸いあげられ、私の唇からは普段より高い喘ぎが漏れた。
「ひぁ……」
彼の手が舌が私を嬲り攻める。
止めてくれ…
罪悪感を覚えながら、それを快感へ変換していく己の汚れた身体に更に罪悪感を募らせ…
悪循環をもたらす行為の途中、彼が囁いた。
「オレ、あんたのそういうとこが好き…」
そう言って笑う彼の笑みがどこか歪んでいる様に見えた。
「だって、あんたを見てるとオレはまだ大丈夫だって思えるから…」
彼の言葉に私は目を見開く。
身を支配していた快楽が一気に冷めていった。
だが、自身が萎えることはなく、彼の愛撫に熱が高まる。
2度目の絶頂が近い。
唇を噛み締め彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返す。


ああ、そうか…
君はそれを望んでいるのだね。

彼もまた自分自身に嫌悪していたのだろう。
彼の側には常に弟がいる。
それが彼を追い詰めていたのかもしれない。
だから、彼は私の所へ来た。
人は自分より劣ったもの存在で自分を保とうとする。
優越感を持つことでアィデンティティを守るのだ。
彼にとって私が劣等者として必要だと言うなら甘んじて受け入れよう。
それが彼の糧となるのなら、いくらだって…
彼の零す言葉が、行為が、刃となり私に傷を刻む。
その傷から流れる血が彼の薬となるのだろうか。
抉られる傷はじくじくと痛み、いつの間にか甘美な快感を生み出し始める。
私はなんと汚い大人だろうか。

けれども、そんな私を君は必要としてくれるのだね。

それならば――
こうして穢れるのも悪くない…

 

 


あとがきと言う名の懺悔

かなり遅くなってしまいましたが、巽様へのお約束(?)のプレゼントです。
ただ単に背徳を感じるロイが書きたかっただけなんですが、いつのまにか病的な二人に…
まあ、僕が書くシロモノですから…(遠い目)
しかし、これを仕事中に携帯でぽちぽち打っているって言うのはどうだろうか。

なんだか色々と濃いものになってしまったので、18禁と言うことで…v(おい)

巽様のみお持帰り可でございます。
…いらなければ放置しといて下さいませ。(土下座)

06.05.18