子供の過ち(改訂版?)
子供は真っ直ぐで、しかし不器用なものだ。
ストレートに自分の想いを伝えようとする為に、逆に上手く伝えることが出来ない。
そのせいで相手が傷つく事にも気が付けない。
全てが終わってやっと、自分の犯した過ちに気が付く。
子供と大人――その距離はあまりにも遠いのかもしれない。
東方司令部執務室にて、司令官ロイ・マスタング大佐は仕事に追われていた。
それというのも、日頃から彼が期限ギリギリまで書類を溜め込む癖のせいであり、自業自得なのであるが…
彼の部下ホークアイ中尉に拳銃を突きつけられ、ようやく真面目にデスクへと向かった。
山のように堆く積まれた書類の処理を渋々始めて、かれこれ三時間以上になる。
さすがに若くして大佐の地位についただけあり、文字通り山のようにあった書類はあと僅かとなっていた。
午後三時過ぎ……
ロイが黙々と書類にサインをしていると唐突に執務室のドアがノックされた。
「入りたまえ。」
執務机に向かったまま書類から目を上げることなく、それに応える。
「失礼しまーすっ。」
勢いよくドアが開く。その向こうに赤いコートを纏った金髪の小柄な少年の姿があった。
彼は遠慮する風もなく、ずかずかと部屋に入っていく。
「鋼のか…もう少し静かに入って来れないのかね。」
その無遠慮な態度にロイは苦笑を浮かべながら、書類から顔を上げる。
「うるせーっ。久しぶりに会って言うことがそれかよ。」
小柄な少年――エドワード・エルリックは睨むようにロイをちらりと見やる。
真っ直ぐに来客用のソファへ向かい、勝手にどかりと腰を下ろす。
「本当に久しぶりだな。この前、来てから一ヶ月になるぞ。」
言っても無駄だとでも思っているのか、ロイは勝手なエドワードの振る舞いを窘めることなく再び書類に目を戻す。
エドワードはだらしなくソファにもたれかかり、そんなロイの様子を見やりつつ答えを返す。
「悪ぃ悪ぃ。北の方に賢者の石の研究者が居るって聞いてさ。」
「結局、はずれだったのだろう?」
先程室内へと入ってきた時の彼の足音、それは相変わらず左右で違う音を立てていた。
それは残念ながら目的が達成されていないという事を表す。
「ああ。研究なんて大層なもんじゃねーよ、あれは。」
落胆するふうに溜め息をつきながら答える彼にそうか、と相槌を打つ。
彼の道はやはり険しいものだ。簡単にはいくまい……
「ところで、アルフォンス君はどうした?」
わずかに落ちた沈黙を破り、ロイが問いかける。
今日はいつも一緒に居るはずの彼の弟である、アルフォンス・エルリックの姿がない。
「あ、アル?あいつ、また猫拾ってきてさ。元居た所に戻してくるか、飼い主探して来いって言ってやったんだよ。」
「君も薄情だな。猫の一匹や二匹構わんだろう。」
「五匹だよ。」
「……それはさすがに多いな。」
「だろ?」
そのときのことでも思い出したのか、エドワードは大きく溜息をつく。
ソファに凭れていた体を起こしつつ、会話を繰り広げながらも手を止めないロイへと視線を向ける。
「大佐、珍しく仕事熱心じゃん。そんなに切羽詰ってたの?」
「それはどういう意味かね?」
「さっき、ハボック少尉から聞いたぜ?大佐は中尉の言いつけで外出禁止だから執務室にいるはずって。また仕事を溜め込んだから、ってさ。」
「ハボックの奴……」
飄々とした態度と咥え煙草がトレードマークの部下――ジャン・ハボック少尉とエドワードの会話風景が目に浮かぶ。
おそらく人のことを無能だなんだと話していたに違いない。
後でハボックに残業でも押し付けてやろうなどとロイは頭の中で考える。
「マジで外出禁止なの?」
「……ああ、まあ。」
微妙な沈黙の後、その問いかけに小声で肯定の返答を返す。
「へぇー、なっさけないね、大佐。」
「うるさい。」
非常に愉快そうに笑うエドワードとは対照的に、ロイは不愉快で堪らないといった表情で言い捨てる。
よっぽどツボにはまったらしくエドワードはしばらく、けたけたと笑っていた。
ロイは深い溜め息をつき、ペースの落ちた手を動かす事に専念しようとする。
弱みを握ったかのようにエドワードは口元を歪め、ロイへと言葉を投げかける。
「それで急いで終わらせようとしてるわけ?」
「いや……確かにそれもあるが、今日はデートでね。遅刻などするわけにはいかないだろう?」
目線を書類へ落としたまま、ロイは口元にかすかな微笑を浮かる。
「ふーん……」
意外で不愉快な返答にエドワードの笑みが消えた。
しかし、ロイはそれに気付かない。
「まあ、この程度ならあと30分もしないで終わるだろうな。」
そんな呟きを嬉しそうに零され、エドワードの不快さは増していく。
エドワードの金色の瞳に鋭く冷たい光がよぎる。
「大佐……」
「何かね?」
低く呼ぶエドワードの声に対して、相変わらず書類から顔を上げることなくロイはさらりと返事をする。
それが更にエドワードの感情を逆なでした。
「こっち、向けよ。」
いつもより数段トーンの落とされた声に、ロイは訝しげに顔を上げる。
「はがっ……!?」
視線を上げると目の前にずいとエドワードの相貌が迫ってきていた。
驚き思わず声が出たが、それは唇ごと彼に封じ込まれてしまう。
「……っ」
ロイは慌てて肩へと手をかけエドワードを押し退けようとするが、それは机の上に登った彼に押さえつけられてしまう。
エドワードは口づけを深くしようと舌先で唇を何度もなぞり歯列を撫でる。
しかし、それはロイが歯を食い縛っていて叶わない。
焦れたエドワードはロイの首筋を機械鎧の指先でつつっとなぞるように擽る。
眉根を寄せて逃れようともがいていたロイだが、不意に与えられた首筋への刺激に力が抜けた。
その隙をついてエドワードは舌をロイの咥内へと侵入させ、相手のそれを絡み取る。
「んんっ…、…」
エドワードは絡めとった舌を甘噛みし、吸い上げ甘い蜜のような唾液を啜る。
激しく貪る様な口づけにロイの意識は霞がかり、上手く身体へ力を入れることが叶わなくなる。
ようやくエドがロイの唇を解放する。二人の舌を銀色の糸が繋いでいた。
「っはあ…ふっ…」
「逃げるなよ。」
乱れた呼吸をしつつも椅子を引きその場から逃れようとするロイ。
エドワードは机を乗り越え、椅子から引きずり落とし床へと押さえつける。
「っつ…鋼の、いい加減にしろっ!」
力尽くで背中から床へと押し倒され、衝撃に息が詰まる。
表情をゆがめつつも相手へと強い口調で言い捨てた。
しかし、自分を押さえ込んでくる少年に対してロイは本気で抵抗することが出来なかった。
それはエドワードの表情が怒っているような、それでいて悲しそうなものだった為。
そして、ロイ自身エドワードを嫌っていず、むしろ好意を抱いていたからである。
「鋼の!やめろ。」
「ヤダね。」
「はが…ひっ!」
しかし、そんなロイの声は一向にエドワードに届かない。
きっちりと着込まれていたロイの軍服を乱暴に乱していき、露になったその首筋に噛み付く。
すると、軍人にあるまじき白い肌に鮮やかな紅い華が咲く。
急に与えられた刺激に咽喉が鳴り、びくりと身体が強張った。
それに味を占めたのかエドワードはその白い肌のあちこちに紅い華を咲かせていく。
しばらくは弱々しくも抵抗していたロイだったが、言葉もささやかな抵抗も通用しないと悟ると目を伏せてエドワードの行いを大人しく受けていた。
「っ…、…」
はだけさせた軍服から覗く紅い実にエドワードが口付けた瞬間、ロイの唇から甘さを含んだ吐息が漏れる。
「へえ、ここ弱いんだ。カワイイ。」
「ばっ、か…やめっ…」
ロイは羞恥の為に顔が熱くなる。
頭を振ってやめるよう示すが、エドワードの行為はエスカレートしていくだけだった。
片方は口腔へと導かれ舌先で転がされ、反対の実は指で擦られ、嬲られる。
そのうち止めてくれるだろうなどと考えていたのだが、それは甘かったようだ。
「もう、いいだろう……やめな、さい。」
エドワードを窘め、その手を優しくどけようと試みる。
しかし、それが彼の気に触ったらしい。いきなりロイの中心をズボン越しに握りしめた。
「ひっ…!?」
ズボン越しとはいえ自身を握られ、痛みと快感にロイは危うく悲鳴を上げるところだった。
慌てて唇を噛み締めて、嬌声を堪える。
荒々しくエドワードはロイのベルトを抜き取り、ボトムを下着ごと取り払う。
下肢を大気に晒され、ろいは肌を粟立たせ、こくりを咽喉の鳴らす。
それは半ば勃ち上がり、官能のしるしである蜜を零していた。
その様子をエドワードは見つめて小さく笑いを零す。
羞恥心が煽られ、思わずかあっと頬から耳までを真っ赤に染めあげた。
「やめないからな。あんたがオレのこと覚えるまではね。」
言うや否や、エドワードはロイの足を大きく開かせて眼前へと小さな窄まりを晒す。
そこへ生身の左手の中指を宛がい無理やり差し入れていく。
「ふっ…くっ…っん」
先走りで多少濡れてはいたが、殆どなんの助けもなく挿入されたのだ。
その痛みと圧迫感からの苦しみにロイは歯を食いしばる。
エドワードはロイの身体を労わる様子もなく、ぐいぐいと奥まで指を差し入れ、狭いそこを拡げ様と指を蠢かせる。
痛みと圧迫感ばかりの行為だった。
しかし、エドワードの指がある一点を擦り上げると、ロイは首をそらせながら快楽に悶え始める。
エドワードは口元を歪めて笑いその一点を執拗に擦りながら、指の数を増やしていく。
懸命に声を殺そうと口元を抑えて、それでも漏れる吐息……
快楽の中のロイはあまりにも妖艶で、エドワードを煽っていく。
「大佐、あんた色気あり過ぎ。もう限界だぜ。」
エドワードはロイの中から勢いよく指を抜き去る。
その衝撃にロイの身体が小さく痙攣した。
浅く速い息を繰り返しながら己を落ち着かせようとするロイを他所に、自分のボトムの前を寛げて、エドワードはすでに昂っている自身を取り出す。
「はぁ…ッ…鋼の、それは…やめ…」
艶めいたロイの漆黒の瞳が必死に訴えかけてくるが、それすらエドワードを煽り立てる。
「ダメに決まってんだろ。オレを教えるんだからな。」
エドワードは力なく抵抗するロイを押さえつけ、脚を更に大きく開かせる。
自身をロイの僅かに解した蕾へと宛がう。
ゆっくり少しずつ腰を進められ、エドワードの雄がロイの中へ沈み込んでいった。
「っ…んあああっ…く、あっ…」
硬い蕾は異物の挿入を拒む。それはロイに酷い痛みを引き起こした。
そのあまりの痛みにロイは堪えていた悲鳴をあげてしまう。
「くっ……」
そして、その無理やりな挿入はエドワード自身にも痛みを与える。
それでも、エドワードは腰を進める事をやめず、奥へと挿入していった。
根元まで挿入すると一つ息を吐き出し、歯を食いしばり強い締め付けに逆らいエドワードはゆっくりとだが早々に律動を開始する。
引き裂かれるような痛みにロイの表情は歪み、身体は小刻みに痙攣していた。
「く、はっ…」
苦しげな吐息を漏らし、エドワードの無理な動きに耐えているしかない。
エドワードはロイを見下ろし、腰を動かして自身の先端で内壁を擦りたてる。
柔らかな内壁をぐりぐりとそれで擦っていたが、ある一点でこりっと何かを潰すように先端が当たった。
「ひ、ああっ…」
びくっとロイの身体が強張りを見せる。
先程指で攻め立てた一点を見つけ出し、小さくほくそえむと先端をそのポイントに宛がい小刻みに腰を揺する。
前立腺への執拗な行為に次第にそこの締め付けも緩み始めた。
そうなれば此方のものとばかりにエドワードは動きを大きくし、激しくロイの内部を犯す。
ロイを襲っていた痛みも快感に飲み込まれていき、今唇から漏れるのは呻きではなく喘ぎだ。
時折、抑えきれない高い嬌声が漏れ聞こえた。
痛みから萎えてしまったロイのものも、今はだらしなく震えながら蜜を零していた。
突き上げを繰り返しつつ、エドワードはロイの雄をちらりと見遣る。
くくっと咽喉奥で笑い、左手を伸ばし指を絡めて性急に扱きあげる。
「はぁっ…い、ん……」
ロイは前後からの強烈な刺激に自身がどくりと脈打ち、弱々しく頭を振り快感に抗う。
「イきそうだろ?」
笑い混じりの問いかけに酷い羞恥心が再び沸き起こる。
そんな羞恥に内壁が反応を示し、それにエドワードは嘲笑うかのように前後の攻めを強めた。
「は…インラン。でも、イかせないぜ?」
唇の端を上げるとエドワードは前を扱いていた手でロイ自身の根元をきつく握り戒める。
「ひぃっ…やっ、ぅ…」
目を見開きエドワードを見つめる。
煽るだけ煽られて、塞き止められた熱が体中を暴れまわっていた。
戒めをきつくしたまま、数度激しく最奥へと突き上げ、エドワードはロイの中に欲望を吐き出す。
熱い飛沫が奥へと叩きつけられた。
「ふっ、あああっ!」
びくびくと身体を痙攣させながら、ロイはエドワードの液を受け止めた。
エドワードは荒い呼吸をしつつ、中から自身を抜く。
いまだロイのモノは戒めたままだ。
イくことの出来ぬ苦しみにロイは口を開き、唾液を端から伝わらせつつ喘ぐしかない。
その様子を見下ろすエドワードの目は欲情に濡れきり、鋭い光がよぎる。
「まだ、まだだ…」
自分の髪を結んでいたゴムを解く。はらりと金色の髪が肩から滑り落ちた。
エドワードはそれでロイの根元をきつく縛り上げなおす。
口元に優越の笑みを浮かべて、ロイを見下ろす。
「もっと…まだ足りないよ、大佐…」
再び己の精液が零れだしている蕾へ宛がい、一気に挿入する。
今度は始めから容赦ない突き上げが続く。
己のうちに渦巻く感情をそのままロイに伝えるかの如く――
エドワードは自身の快楽を追い、欲を高めていきそれをロイの中へと注ぎ込む。
その行為の中、散々攻め立てたロイ自身を解放することはなかった。
それはロイに快楽と苦痛をもたらす。既に抗う術はなく、喘ぎ苦しむ姿を晒すしかない。
最中……不意に、ロイの手が上がる。
しかし、エドワードの手によってそれは叩き落された。
力の入らぬロイはそれ以上意識的な動きを見せることはなく瞳を閉じ、エドワードが解き放ってくれるその時まで、ただただ行為に耐え続けた。
エドワードは気がつかなかった。
手を上げた時のロイの瞳が優しく穏やかであったことを……
ロイの些細な言葉がエドワードの怒りと嫉妬心を呼び起こした。
しかし、もしエドワードがロイの言葉を最後まで聞いていたら、こんなことにはならなかっただろう。
『どうだい、デートに付き合ってくれるかね?』
ロイが言いたかった本当の一言は彼への想いとともに、結局伝わる事はなかった。
☆THE END☆
以前、開催されていた鬼畜祭2様へ投稿させていただいたものです。
正しくは改訂版の改訂版だったり…
もっと前に書いたものを少し変えたのです。
その時はロイの思いはきちんと伝えられて、更にギャグ調で終わっていたんです。
それを報われなくしたものが、鬼畜祭への作品。
それの更に直しがこれです。