愚者たち(改訂版?)

月の見えぬ新月の夜。
不気味な静寂の中、星が異様なほど輝いて見えた……


人々が深い眠りについてしまったであろう深夜。
薄暗い街灯で照らされたイーストシティの住宅街を一台の車が走っていく。
一般住宅街を抜け、屋敷と呼べるような家々が立ち並ぶ域へと車は進み、その車はそのまま一軒の邸宅の前で停車する。
後部のドアが開き、一人の男が降りてきた。
男は闇に溶け込んでしまうような黒髪を持ち、青い軍服の上に黒いコートを羽織っている。
男の名はロイ・マスタング、国軍大佐にして『焔』の二つ名を持つ国家錬金術師だ。
この邸宅は東方司令部司令官であるロイが軍から与えられた官舎だ。士官用の官舎の為、それなりに大きい。
「ありがとう。」
ロイは運転手に礼を述べるとドアを閉める。
車が走り去るのを見届け、家へと足を向ける。と、玄関のドアの前に座り込んでいる人影があった。
ロイは一旦立ち止まり、身構える。
こんな時間に一体誰が何の目的でそんな場所に居るのか……
しかし、その人影が誰かを理解すると肩から力が抜けた。
「よぉ、お帰りー。」
人影――上下黒の服に赤いコートを身に纏った鋼の錬金術師、エドワード・エルリックが片手を挙げひらひらと振って見せたのだ。
ロイは止めていた歩みを再開し、エドワードの元まで進むと一歩手前で足を止める。
「鋼の、君はここで何をしているんだね?」
「大佐を待ってたに決まってんじゃん。」
問いかけてみれば、さらりとエドワードは答える。
ロイはそんなエドワードに一つ溜息を零した。
エドワードは時々こうして帰ってくるかもわからないロイを玄関前で待っていることがある。
それゆえ、確かに質問は今更だったかもしれない。
本が三,四冊入る程の大きさの紙袋を持ち、エドワードは立ち上がった。
「君の訪問はいつも突然だな。」
その様子を視界に入れつつ、ロイはエドワードの横に立ち鍵を開ける。
「まあね。だって早く逢いたいからさ。」
エドワードは年不相応な笑みを浮かべながら応え、開けられたドアをくぐる。
ロイも後に続いて我が家へと足を踏み入れる。
家に入って早々に、エドワードはロイへと向き直り、
「大佐、キスしていい?」
「…ああ。」
玄関の鍵を閉めながらロイはエドに承諾の返事を返す。
振り返ったロイの唇にエドワードは性急に自分のそれを合わせた。
身長差の為にエドワードは爪先立ちをし、ロイは屈むこととなる。
ロイは特に抵抗することもなく、エドワードの好きなようにさせた。
全てを奪い尽くそうとするかのようにロイの咥内を貪るエドワード。
長く激しい口付けはエドワードが満足するまで続いた。


エドワードはシャワーを浴びた後、ロイの寝室のベッドにうつ伏せになって寝転がっていた。
今日持ってきた紙袋を覗き込んでいると、自然と笑みが零れる。
「君は一体、何を持って来たんだね?」
突然かけられた声に振り返れば、シャワーを終えたロイが部屋へと入ってきたところであった。
バスローブを身に纏い、濡れた黒髪と温まったせいで薄く色づいた肌がなんとも言えぬ色気を醸しだしている。
「べっつにー。」
嬉しそうな顔をしながら紙袋をサイドボードの上に置くエドワードを見やり、ロイは内心で溜息をつく。
客室を彼の為に用意したというのに、無断で人の部屋で寛いでいる。
しかし、それを指摘するつもりはすでにない。
これも毎度のこと。ロイ自身も分かっていながら客室を整えてやる。
そして――
そう、これから行われる行為もいつものことである。
ベッドに座り直したエドワードの隣に腰を下ろす。
「ね、いいの?」
「好きにすればいい。」
答えてやると、エドワードは嬉々としてロイをベッドに押し倒す。
先程玄関で交わした口付けと同様にロイは抵抗の素振りを見せず、エドワードにされるがままだった。
エドワードがロイの唇をぺろりと舐めると、ロイは唇を開き静かにその舌を迎え入れる。
ロイの優しい口付けに酔いながら、エドワードはその白い肌を覆っているバスローブを脱がしていく。
ロイもまたエドワードの服に手をかける。
「あ、待って。」
しかし、いつもとは違いエドワードはその手を拒んだ。
ペロリとロイの赤く熟れた唇を舐めあげてから、エドワードは自分だけ身を起こす。
「なんだ?」
自分だけ裸体にされ、いきなり身体を離したエドワードをロイは怪訝気に見つめる。
エドワードは相変わらず嬉しそうにしながら、サイドボードの紙袋を漁っていた。
これだ、とエドワードが呟き、何かを取り出す。
その何かを目にし、ロイは息を呑んだ。
「鋼の、それは…」
「こないだ見つけてさ、買ったんだ。大佐に似合いそうだと思って。」
楽しそうに笑いそれ――銀色の手枷と黒い首輪を持ち、ベッドへ戻る。
「つけてもいいだろ?」
「好きにしなさい。」
感情の見えない声音でロイは答えた。
それを聞きエドワードはさらに嬉しそうな笑みを浮かべて、ベッドに腰をかけてロイの腕を取る。
ロイは腕を掴まれその手首に枷を嵌められても、首に首輪をされても、抵抗することなくエドワードの様子を見つめていた。
どうやら首輪と手枷の鎖は繋げられてあったらしい。そのままベッドヘッドへ錬金術で固定されてしまう。
「な?似合うだろ?」
銀色の手枷が妖しく光り、ロイの白い肌と黒い首輪のコントラストが妖艶さを引き立たせていた。
エドワードの視線がロイの身体を隅から隅まで嘗め回すかのように這う。
「私には分からん。」
ロイはそんなエドの視線から逃れるかのように居心地悪げに身じろぎをする。
「ホントに似合うんだけどなー。」
クスクスと楽しげな軽い笑を漏らしながら呟く。
ベッドの端に腰掛けエドワードは服を脱ぎ、ベッドの外へ放り投げていく。
「鋼の、あんまり散らかすな。」
「いいじゃん。」
すべて服を脱ぎ捨てたエドワードが再びロイの上に覆いかぶさった。
ギシリとベッドが立てる軋んだ音が耳に付いた。
晒されたロイの肌に手を這わす。身体の線をなぞりつつ、肌を堪能するように指を滑らせる。
「大佐、すげぇ綺麗。似合うよ、やっぱり。」
ロイは小さく息を呑み、エドワードの愛撫に耐えていた。
エドワードはそろりと指先で手枷に戒められた手や腕をなぞる。
ロイの顔を覗き込み、首輪に触れながら問いかける。
「ね?それ、痛くないでしょ?内側に毛があるから。」
エドワードの言うとおり、その手枷と首輪の内側は装着者の肌を傷つけぬように柔らかな毛皮に覆われていた。
指先でそっと肌に触れられ、湧き上がる感覚にロイは歯を噛み締めて声を抑える。
「…痛い?」
エドワードは特に返事がないことに不安げな表情を浮かべて、囁く。
ロイは長く息を吐き出し、意外としっかりした瞳をエドワードへと向ける。
「大丈夫だ。痛くはない。」
「よかったー。大佐の為に選んだんだぜ?」
「そうか…」
無邪気な子供の笑顔でロイの身体を愛おしそうに愛撫し続ける。
エドワードが胸元に唇を落とす。それから胸元、首筋、様々な所へと口付けていく。
ロイは小さく濡れた吐息を漏らす。
身体のあちこちに柔らかな感触が残り、その度にちりっとした痛みと快感が駆け巡った。
さらにエドワードは胸の突起を機械鎧の指で摘まみあげる。
「…っ!」
びくん、とロイの身体が痙攣し、鮮やかに頬に朱が走る。
「気持ちイイ?」
その様子にエドワードは突起を執拗に愛撫し続けた。
赤く熟れた胸の実に唇を寄せ、優しく舌で転がし、反対側の突起は右手を用い摘みあげる。
ロイはその快感に身体を震わせながらも黙って受け入れていた。
エドワードの手は身体のラインを腰から太腿へと撫で下ろしていきやがて、中心に辿り着く。
既にそこは硬く成長し、蜜を溢れさせていた。
「ん…ふ…」
「声出せって、大佐。」
雄に指を絡め上下に擦ると、さらに行為の助長をするかのように蜜が溢れ出し、生身の左手を濡らしていく。
ロイは背を反らせ悶えながらも、必死に快楽に逆らおうとしていた。
「大佐…なあ、声出せ…」
「んぁ…ふ、ぁ…」
だが、耳元で懇願するかのようにエドワードが囁きかけると、ロイはあっさりと懸命に耐えていた嬌声を解放させた。
その声を聞くとエドワードは安堵に似た笑みを浮かべ、左手の速度を上げていく。
もはやロイのモノは蜜でドロドロになり、今にも弾けてしまいそうであった。
「イっていいよ?」
解放を促すように先端へと爪を食い込ませる。
しかし、ロイは首を振り拒絶の意を示す。
「なんで?」
ロイの拒否反応にエドワードは一瞬怯えるかのような表情をよぎらせる。
そんなエドワードへロイは快楽に苦しさを覚えつつも、無理に微笑んで見せる。
「早く……っ、一緒に…」
途切れ途切れに発せられる言葉。ロイの言わんとしている事を察し、エドワードにほっとしたように笑みが戻る。
「うん・・・一緒にイこうか。」
エドワードはロイのそれから手を離す。蜜に濡れた指を軽く舐める。
再び紙袋に手を伸ばし漁り、中からクリームを取り出す。
蓋を開けて、手の届く所へ置くとロイへと向き直り、
「ちょっと我慢してくれよ。」
鋼の右手でロイの昂りの根元をしっかりと戒める。
ロイは苦痛に眉根を寄せるが、抗うことはせず、逆に脚を大きく開いた。
エドワードは指先でクリームをたっぷり掬うと、奥にある蕾に塗りつける。
馴染むようにじっくりと、少しずつ中へ指を進めていく。
蕾が緩み余裕が窺えると指を奥まで挿しいれる。ほぐす様に中で指を旋回させ、蕾を拡げていく。
溶けたクリームがくちゅくちゅと音をたて、ロイの喘ぎ声と卑猥な音楽を奏でた。
徐々に蕾は緩み、指も1本から2本へ、2本から3本へと増えていった。
「はぁっ・・・ぁふ・・・はが、ねの・・・」
「なに?」
「もう、いいから・・・はや、く・・・い、れ・・・」
生理的な涙で潤みきった瞳で見つめると、エドワードの瞳の中に情欲の焔が灯った。
ずるりとロイの蕾から指を抜き去る。ロイの蕾は消え去る指を求めるかのように収縮を見せた。
エドワードはすでに解けきったその蕾に己の雄をあてがう。
「挿入れるよ、大佐。」
ロイ自身を戒めたまま、中へエドワードは猛るものを侵入させていった。
「あああーーーっ!」
ロイは悲鳴のような喘ぎ声をあげた。それに気に留めずにエドワードは腰を進めていく。
ゆっくりとロイの中にエドワードが飲み込まれていく。
全てを挿入れ終えると、そのままの状態で二人はキスを交わした。
始めは触れるだけのキスを何度も角度を変えて交える。
その度に少しずつ少しずつ深いキスへと変化していった。
「んんっ!ふぅ…」
舌を絡めあったとき、エドワードがゆっくりと律動を開始した。
キスに合わせるかのように腰の動きも徐々に深くなる。
キスが激しくなり、呼吸すらも奪うかのようになると、エドワードの突き上げも激しく前立腺ばかりを擦りたてていく。
ロイは激しいキスと動きにただ翻弄されるしかなかった。
「ん…はぁっ…はが、ねの…もう…」
唇の離れた瞬間にロイが途切れ途切れに言葉を零す。
「っ…何、大佐?」
再び角度を変えて唇を貪ろうとした唇は止めて、しかし腰の動きはそのままに、エドワードが問いかける。
わかっている筈だ。それでもエドワードは問いかける。
それは決して嫌がらせや征服のためではない。
だからこそロイも躊躇いなく応える。
「もう…イかせて、くれ…」
未だに塞き止められたままの昂ぶりの解放を請う。
「ん…オレも、限界。…一緒に、イこっか?」
微かな笑みを浮かべエドワードはロイへと掠れた声で返す。
ロイはその言葉にこくこくと頷いて見せた。
それを確認すると、エドワードはさらに激しく突き上げ、戒めていたものを逆に扱き解放を促す。
「はぁ…んあああっ!」
「くっ…!」
二人は同時に欲望を解き放った。


しばらく二人は荒い息をしながら、肌を重ねあっていた。
始めに動いたのはエドワードだった。
もっとも、枷や首輪を嵌められたロイが身動きを取れるわけがないが……
ずるり、とロイの中から自身を抜き去る。
その感触にロイの弛緩していた身体がびくりと大きく痙攣した。
「なあ、大佐…」
「はぁ…な、んだ?」
エドワードはそんなロイの身体を胸元から腹部へと撫でながら、笑んだ瞳を向ける。
ロイは息を整えつつ、エドワードの声に応える。
「もっとしたいんだ。駄目?」
甘い声で強請るのに、対しロイは冷めたような声で、
「好きにしなさい。」
エドワードは一瞬寂しげな表情を見せるも、すぐに微笑みを浮かべる。
ロイは静かに目を伏せ、再び訪れるであろうエドワードの愛撫を待った。
しかし、一向にそれは訪れない。代わりにカサ、と紙の擦れる様な音が聞こえた。
不思議に思い目を開くと、紙袋を手にしたエドワードがいた。
「鋼の?」
怪訝な表情を浮かべるロイに触れるだけのキスをする。
「見て。これも大佐の為に買ったんだよ。」
エドワードの手の中にあったのは男の雄を模した玩具だった。
「…そうか。鋼の、君の好きにしなさい。」
ロイは今日、何度目かになる許可の言葉をエドワードに与えた。


エドワードは壊れてしまったかのような微笑を浮かべ言った。
「大佐、大好き・・・」

エドワードは純粋にロイを愛していた。
ロイはエドワードの心の弱さを受け止めてくれた。
壊れかけたエドワードに道を示し、導いてくれた大切な人だった。
それがどんなに険しい道であろうと、泥の河であろうと――
確かにそれは可能性だったのだから。

エドワードは真っ直ぐにロイを求めた。
愛されることを望んだ・・・
しかし、ロイはどこまでも子供としてしか見てくれなかった。
だから、ロイに愛されたいがゆえにエドワードは行為に及んだ。
自分は子供ではないと証明するために・・・
愛するロイに振り向いて欲しくて・・・
エドワードはロイが拒絶することを絶対にしなかった。
行為においては必ず許可を求めた。
だが、逆に許可が下りれば何でもした。

それはロイを強く想うがゆえに・・・


ロイは手枷と首輪に捕らわれ、秘められた蕾に玩具を挿入れられ、エドワードに犯されつづけた。
否、たとえ全てが自由だったとしてもロイは逆らうことなく、エドワードに犯されただろう。

なぜならば、ロイはエドワードを愛しているのだから。
エドワードと出会ったあの時、焔を宿したその瞳に魅せられた。
目的を成し遂げるための強い意志を映した金色の瞳。
真っ直ぐに、純粋に・・・
それは子供ゆえの真っ直ぐさであり、苦難を乗り越えたゆえの純粋さだった。

だが、エドワードは気付いてはくれなかった。
ロイがどれだけ愛し、慈しんでも、エドワードは子供扱いと思い込んでいたのだ。
エドワードが望めば、ロイはそれを叶えてやった。
どんな行為を望まれても、従順に抱かれた。
それがエドワードの愛情だと知っていたから・・・
ロイにはその愛情を拒絶することなど出来はしない。
エドワードが気づかないロイの優しさ・・・
エドワードを突き放すことが出来ないロイの甘さ・・・
淫らな行為をなんでも許す。

それはエドワードが愛おしいがゆえに・・・



愚かな行為に堕ちゆく二人の愚者は――

互いを愛するがゆえに、互いを傷つけあう・・・・・・



☆THE END☆

 


以前開催していたお祭り・鬼畜祭2様へ投稿させていただいたものの修正版です。
相手を愛する為の行動が、相手を傷つけている。
それに気がつくことの出来ない二人。
なので愚者なのです。