プレゼント 〜サンタクロースの贈り物?〜


――日頃のお返しにクリスマスプレゼントを配ろう!



それは12月初め頃のある日のことだった。
いつものようにイザークの執務室でディアッカと俺の3人が揃ってデスクワークをしていた。
そこに先頭に立って元気よく入室したルナマリア、おずおずと続いてメイリン、そして不機嫌そうなぶすっとした顔で更に後ろにシンがやって来た。
皆でクリスマスパーティーをすることになったとかで、俺達3人を誘いに来たらしい。


そういえば、そういう時期か…
プラントにおけるクリスマスは完全に宗教色をなくし、イベント的要素だけが残っていた。
そろそろあちこちでイルミネーションなどの飾り付けがされているんだろう。
当日はご馳走を用意したり、プレゼントを用意したりして楽しむのだろうな。

プレゼントか…
――そうだ!

戦後の俺の立場は微妙な所があった。
けれども嘗ての仲間達のお陰でこうしてザフトに復帰することが出来た。

明るく積極的に声をかけてくれるルナマリア。
控えめだけれどいつも気遣ってくれるメイリン。
ぶっきらぼうながら気がつくと傍に居るシン。
何かと面倒ばかりかけているディアッカ。
そして……居場所を与えてくれたイザーク。

己を支えてくれる仲間達の手にいつも助けられてばかりで、せめて何かお返しが出来たらといつも思っていた。
クリスマスはいい機会かもしれない。
日頃のお礼を兼ねてクリスマスプレゼントを贈ろう。
でも、パーティーがあるというのならそこでもプレゼントのやり取りはあるだろう…
なら、こっそりと皆に渡そう。サンタクロースの様に夜、枕元にこっそりと。
それなら驚かせることも出来るだろうし、いいかもしれない。


ルナマリアたちとイザークがクリスマスパーティー出席の為に駆け引きを繰り返している時に俺は決心をした。





そして、訪れたクリスマス・イヴの夜。
いよいよ作戦実行だ。
俺は白いふわふわのファーがついた赤い上着とボトムを身に纏い、これまたファー付きの赤い手袋とブーツに尖がりの先に白いファーのついた赤い帽子を被った格好をしていた。所謂、サンタクロースのコスチュームである。

『皆さんの所にプレゼントをお届けになるのはサンタさんのお役目ですもの。』

と言って、なぜかラクスが用意していたのだ。大体、俺の作戦をどこで知ったのだろう。
とにかく、折角ラクスが好意で用意してくれたのだし、着ないのも失礼だろうと思いこの格好をすることになった。
同じくラクスが用意してくれた白くて大きな袋にはプレゼントを詰めてある。
プレゼントは無難にそれぞれのイメージカラーのハロにした。
色々考えたけれど、プレゼントと言うとマイクロユニットが俺らしいだろうし、手作りだから思いも込められるから。



まずはルナマリアとメイリンの部屋。
流石に女性の部屋に俺が入るのはまずいだろう。
なので、取り敢えず部屋のロックを解除させ後はリボンをつけた二つのプレゼントのハロ自身で枕元に行ってもらうことにした。
部屋のドアを少し開け、隙間からハロを二つ転がし入れる。
二つのハロは跳ねながらそれぞれメイリンとルナマリアの枕元に納まったようだ。
朝になるまでは大人しくしているようにプログラムしたのであとは大丈夫だろう。
「メリークリスマス、ルナマリア、メイリン。」
ドアを閉め、ロックをかけなおす。
よし、ルナマリアとメイリンへのプレゼントは成功だ。



次に向かったのはシンの部屋。
先程と同じ様にまずはロックを解除した。
それから部屋のドアを少し開け、中を窺いシンが眠っていることを確認する。
部屋の中は暗く、微かに寝息も聞こえてきた。起きる気配もない。
ドアを開き、中へと滑り込む。
気配を消し、忍び足でベッド傍に向かう。
思ったとおり、布団にくるまってシンは熟睡していた。
抱えていた白い袋の中からリボンを巻いた黒い赤目のハロを取り出し、シンの眠る枕元にそっと置く。
「メリークリスマス、シン。」
あどけない寝顔に微笑んで、俺はシンの部屋を後にした。



3番目はディアッカの部屋――だったのだが…
此処で予定外のことが起きた。
「何で起きてるんだよ!」
しかも、ロックが掛かっていなかったから勝手にドアが開いてしまったし…
お陰でディアッカにしっかりと見つかってしまい、部屋に招き入れられた。
まあ、仕方がない。
「何でって…見たい本があってさ。お前も読む?」
そう言ってベッドに腰を下ろしたディアッカが持ち示したのは今俺が着ている様なサンタの格好をした女性が表紙の雑誌だった。ただし、やけにサンタ服の丈が短い。巨乳サンタがどうのと言う文字が見えたので、まあそういう手の本なんだろうな。思わず赤面してしまう。
「い、いいっ!!」
首を思いっきり横に振って拒否をすると、そう?とあっさりディアッカはその本を置いた。
「で…お前がそんなカッコしてるってことは、やっぱりプレゼント配ってたんだ。」
やっぱりって、ラクスにもばれていた様だったし、ディアッカにもばれていたのか。
「え、あ…うん。皆への日頃のお礼に。驚かせようと思ってこっそり配ってたんだけど。」
なるほどねー、とディアッカは勝手に頷いて納得していた。
気を取り直すように俺は白い袋を漁り、深緑のハロを取り出す。
「それで…これ。俺からのクリスマスプレゼント。いつもありがとう、ディアッカ。」
俺は思いを込めて笑顔でそれを差し出した。
が、ディアッカは頭を掻き苦笑した。
「サンキューな。でも、それは受け取れねーや。」
「え…」
俺はハロを差し出した格好のまま硬直してしまった。
「大体、なんで翠…」
「えっと、ディアッカのイメージカラー?」
って、そうか!ディアッカは金髪だし、瞳の色も違うし、そうすると緑は軍服ってことに…
「あ、その別に…えっと、ごめん。」
「お前の考えてることは大体わかるからいいけどさ。気持ちは嬉しいし。」
これじゃあ日頃のお礼が出来ない。ディアッカには迷惑ばかりかけて、本当に俺って駄目だな。
「そんなに落ち込むなよ。オレは気にしてねーって。それより…お前、イザークのとこ行った?」
「いや、これからだけど?」
思わぬ質問に首を傾げる。
するとディアッカがニッといつものように笑った。
「ならさ、イザークの『お願い』聞いてやってよ。それがオレへのクリスマスプレゼントってことで。」
『イザークのお願いを聞くこと』がディアッカへのクリスマスプレゼント?
「でも…」
それじゃあ、ディアッカへのお礼にならないんじゃ…
「お前がイザークの『お願い』聞いてくれればイザーク喜ぶだろうし。そうすればオレも平穏に過ごせるわけ。」
「その平穏がプレゼント?」
「そ。」
確かに、ディアッカへの迷惑ってイザークの八つ当たりとか、喧嘩の後始末とか、そんなことばかりだな。
俺とイザークが仲良くしてればディアッカの為になるか。
「それなら、わかった。――あ、これ…」
頷いてから両手で持っていた深緑のハロに気がついた。
そうだ、このハロはどうしようか。
流石にこの色のハロをディアッカにあげるのは悪いかもしれない。
「――それ貰ったことイザークに知られたら、オレ、殺されるって。」
「え?」
思案していたせいでディアッカが言ったことを聞き逃してしまった。
「いや…ほら、それはお前が持ってろよ。お前の瞳の色だし、ちょうどいいだろ。」
ディアッカが一瞬口篭ったことに首を傾げるが、俺はその提案に乗ることにした。
「…そうだな。そうするよ。」
するとやはりなぜかディアッカは物凄く安堵したように息をついた。
「ほら、時間なくなるぜ?イザークのとこに行くんだろ。」
思わず、問いかけようとしたがディアッカに促されてイザークの部屋へ向かうことにする。
「あ、ああ。」
ディアッカはわざわざドアの所まで見送りに来てくれた。
それじゃあ、と言って一旦は背を向けたがふと大切なことを忘れていたことを思い出す。
「あ、そうだ。」
「ん?」
俺は日頃の感謝を込めて笑顔で振り返る。
「メリークリスマス、ディアッカ。」



そして…いよいよ、イザークの部屋だ。
俺はロックを解除し、そっと中を窺う。室内は電気が消されている為に暗く、静かだった。
「寝てる?」
シンの時の様にはっきりと眠っている確信がもてなくて少し悩んだが、こうしていても始まらない。
意を決して部屋の中に忍び込む。
一応、『お願い』の件もあるのでロックを内側からかけなおしておいた。
気配を殺して、そっとそっと慎重にベッドに近づいて行く。
他の誰の時よりも緊張するのは何故だろう。手袋の中の手が汗ばんでいるのがわかった。
ベッド脇からイザークの顔を恐る恐る覗き込む。
横を向きで枕に顔を埋めるようにしてイザークは寝息をたてていた。
ほっと息をつき、あまり見ることの叶わないイザークの寝顔に頬が緩んだ。
そこでふと、枕元に置かれたリボンの掛かけられたファー付きの赤い靴下に気がつく。
クリスマス・イヴの夜に枕元に靴下を吊るしておくのだっけ。それにサンタクロースがプレゼントを入れていくのだとか。
と、言うことはもしかしなくてもイザークも俺が今日の作戦を立てていたことに気付いていたのか。
ラクスといい、ディアッカといい、イザークといい…
驚かせるつもりが、ばれてしまっていたわけだけど、嬉しく思えた。
俺のことをいつも見ていてくれたということだから。
そういえば、ディアッカが『イザークのお願いを聞いて欲しい』と言っていたな。
赤い靴下の周囲を探してみると、脇に畳んで置いてある手紙のようなものを見つけた。
その手紙を取り、少しドキドキしながら開く。


『サンタさんへ

 アスランを嫁に下さい

      いざーく・じゅーる』


加筆やバッテンで修正がしてあったりしたけど…手紙にはそう書いてあった。
「……」
まず、言葉が出なかった。
呆れと困惑でどう応じればいいのかわからない。
イザークを見遣ると相変わらず寝息をたてているし。
困りながらそれを何度も読み返しているうちに次第に嬉しくなってきた。
「…バカ。」
口元を手で覆い隠す。きっと今の俺は耳まで真っ赤だ。
イザークにはいつも世話になっているし、助けられているし…欲しがっているものをあげてもいいだろう。
ディアッカとも約束したからな。
「しょうがない。」
持っていた袋の中からイザークへのプレゼントである銀色のハロとディアッカにあげるつもりで俺のになった深緑色のハロを取り出し、枕元に並べる。空になった袋はたたんでベッドの脇に置いておく。
そして、俺はサンタの格好のまま、イザークのベッドに潜り込んだ。



朝、イザークが目を覚ましたら一番に言ってあげよう。
『Merry Christmas!』 
――と。


 


お祭り企画サイト「Feast of hourglass」様へコラボ作品として投稿したものです。
お題の一つ「29.プレゼント」の綸 三稜草様の作品を拝見して、思い浮かんだので書いてみました。

イザアスなのにディアッカの出番が一番多い気がします…
アスランの可愛らしさやイザークの寝姿など私の力量では表現し切れなかったのも残念。

綸 三稜草様の素敵イラストは
此方です。

07.12月23日
08. 5月 8日 掲載