10.「それは負け犬の科白でしかない」
 ―ロイ独白―

死臭立ち込める荒野。
どこまでも続く果てない大地は煤け黒が広がるのみ。
つい先ほどまであった小さな集落はその跡を残すことなく全てが灰になった。
立ち込めていた煙が細く空へ登り消える。
その日の空は場違いなほど晴れ渡っていた。
黒い大地と青い空が織り成す世界にただ一人黒と青を纏った青年が佇んでいた。
何をするわけでもなくただそこに佇み、大地を見つめている。
風が吹き、青年の髪と外套を揺らす。
そして風は黒い大地を撫で何処かへと去っていく。
空は青く、暖かな陽射しを降り注ぐ太陽は眩い。
黒の大地には青年以外に障害もなく広がる。
それは美しい世界だった。
たとえそれが破壊の跡であっても…

青年が己の手に視線を落とす。
手を覆う白い手袋、その甲に赤で描かれた陣。
それが焔を生みだし、破壊を齎した。
だが、青年がこれを手にしたのは決して大地を黒く染める為ではなかった。
人を殺める為でも、生活を奪うためでも…
ただ知識を求めただけだった。
大切なものを守りたくて…
疑問が脳裏をよぎる。

奪わなければ守れないのか?

答えはすぐに出た。
ノーだ。
けれども、一介の軍人である自分にはこの殲滅を止める術はない。
軍の狗として軍に従い滅ぼしていくことしか出来ない。
それでもいつかは――
いつかは悲しい争いを止めるだけの力を…
その為に今は耐えるしかない。
時には此処から逃げ出してしまいたい時もある。
だが…

「それは負け犬の科白でしかない」

ぽつりと決意を込めて、呟き空を見上げる。
目指すは遥か高み…

黒き瞳の先には蒼い蒼い空が何処までも広がっていた。

 


会社で仕事中に携帯でぽちぽち打っていたのはナイショ。
漸く「台詞から10題」最後のお題にたどり着きました。
最後は締めとしてロイの独白で…
これ、以前に回した一人ロルに近いんですけどね…


06.04.28