9.「勝手に踏み込んだくせに」
 ―エド×ロイ―

東方司令部へやって来たエドワードは司令官執務室のソファを陣取っていた。
その表情は明らかに不機嫌と言った様子。
一緒にこの部屋へ来たはずの弟もエドワードの不機嫌オーラに逃げ出していったほどだ。
そんなエドワードは時折窓際に置かれた大きな執務机を窺い見ていた。
その瞳は不機嫌さと僅かな落胆が見て取れる。
現在、執務机にいつもはそこにあるこの部屋の主の姿はない。
代わりにあるのはデスク上に堆く積まれた書類。
エドワードはその様子から主の逃走を感じ取っていた。
「また逃げ出したのかよ…ほんとにどうしようもねぇやつ…」
募るイライラをぶつけるようにどかりと行儀悪くテーブルに足を投げ出す。
それと同じくして扉が開かれる。
「行儀が悪いな、鋼の。」
エドワードが勢い良く振り返った其処にはこの部屋の主である彼が口元に笑みを乗せ佇んでいた。
驚きに一瞬呆気に取られてしまったが、すぐに不機嫌そうに表情を歪める。
「居ないあんたが悪い。またサボってたんだろ、どうせ。」
ちらりとデスクの上に視線を向け、暗に仕事を溜めている事を示す。
だが、彼は相変わらずの笑みのまま軽く肩を竦めただけだった。
エドワードは彼がデスクへ戻るのを目で追いながら足を下ろす。
「人聞きの悪いことを…会議だよ。誰かに言われなかったか?」
確かに彼の手には会議で使ったのだろうファイルがあった。
それでもエドワードは仏頂面のままだった。
ぎしりと音をたて彼が椅子に腰を下ろす。
デスクの引き出しを開けると持っていたファイルをしまう。
彼はエドワードに向き直ると片手を差し出してくる。
「報告書を…」
彼の動作をじっと見つめていたエドワードは差し出された手へと視線を移す。
それから、溜め息を漏らし立ち上がると彼のデスクへ足を進めた。
だが、何故かエドワードはデスクの前では足を止めず、そのまま彼の傍らまで行く。
「鋼の?」
怪訝そうに傍へやって来たエドワードに彼が向き直る。
エドワードは無言のまま、鞄に詰め込まれていた為にくしゃくしゃになっている報告書を差し出す。
不思議そうにしながらも彼はそれを受けとる。
彼の手がその報告書をデスクの上に置くと、それを合図にするようにエドワードの手が彼の頬に添えられる。
瞬く彼の漆黒の瞳とエドワードの金色の瞳が絡み合い、ゆっくりと二人の唇が重なりあった。
触れるだけのキス。
それはすぐに終わる。
吐息が交じる距離のままエドワードが囁く。
「なあ、あんたんち行ってもいい?」
添えていた手をするりと首の後ろに回し、腕を首に絡める。
金色に輝く瞳には艶やかな色が宿っていた。
彼は更に唇を重ねようとするエドワードを止めるようにやんわりとエドワードの胸を押す。
「鋼の…」
優しく穏やかな声音で紡がれた二つ名は咎めるような響きを持っていた。
エドワードはまっすぐに彼の瞳を見つめる。


「勝手に踏み込んだくせに」

可能性を提示する――そう言ってオレの中に踏み込んできたのはあんただろ。

「最後まで責任とれよ…」


燃え上がる焔を宿した瞳が近づく。
再び近づけられた唇は拒まれることなく、深く重なり混じりあった。

――焔へ踏み込んだ対価は大きい。

 


夜中に携帯で打ちました。
そして修正も夜中に行いました。
今日の朝には家族旅行行かないといけないんですけどね…

このお題はエドロイかハボロイか迷いました。
で、結局エドロイに…
エドの内に踏み込んだロイは逃げられなくなったと言う事で…
まさに飛んで火にいる夏の虫…?

05.09月23日