7.「私はあなたのことが相当嫌いみたいです」 ―キンブリー+ロイ―
美しい花火を打ち上げ終えた紅蓮の錬金術師、ゾルフ・J・キンブリーはご機嫌な様子で自軍のテントへ戻った。
テント内には今日の作戦を終え、先に戻っていたらしい同じ国家錬金術師の彼が居た。
他にも数人の人間が居たがキンブリーの目には彼しか映っていない。
真っ直ぐに彼が一人座っている方へと向かう。
「此処、よろしいですか?」
彼の左隣、空いている席を示し問いかける。
視線をちらりと此方へ向けただけで彼はすぐにその瞳を手元のグラスに戻してしまう。
「勝手に座ればいいだろう。」
帰ってきた返答は酷くそっけないものだった。
それでも愉しげな笑いを咽喉奥から漏らしつつキンブリーは椅子に腰を下ろす。
「作戦、お疲れ様でしたね…焔の錬金術師様?」
近くの古く汚れたテーブルに肘をつきその上に顎を乗せる。
そうして上目遣いで彼の表情を窺うと明らかに不快げな色がよぎった。
クスクス笑いながら尚もキンブリーは彼に語りかける。
「今日も素晴らしい活躍だったようで…」
「いい加減にしろ、キンブリーっ…」
キンブリーの言葉を遮り彼が声を荒げる。
その声に気づくものは居ない。
二人に目を向けるものも…――
まるで二人が存在するその空間だけが切り離されているようにすら思えた。
「私はあなたの活躍を讃えているんですがね…」
何をそんなに怒るのかと身を起こすと肩を竦め彼の顔を見つめる。
「人を…殺し誉められても嬉しくなどない…」
低い声が苦しげな相貌が弱々しい言葉を紡ぎ出す。
キンブリーは先程までの愉しげな表情から不愉快そうな雰囲気へと移り変えた。
「やはり理解できない事をあなたはお考えなのですね…」
彼は自分と同じ種の人間だと思っていた。
人とは少し違う場所に立つもの。
だからこそ彼に期待をした。
彼ならば自分を楽しませてくれるのではないかと……
花火に焔は欠かせないのだから…
だが、彼の考え方は自分とは全く違っていた。
吐き気のような嫌悪感が押し寄せる。
「私はあなたのことが相当嫌いみたいです」
「私もだ」
間を置かず返された言葉に皮肉を孕んだ笑みが浮かぶ。
――何故彼は苦しむのだろうか…
――何故彼は苦しみながら前へ突き進もうとするのだろうか…
人よりも優れた力を持ち合わせながら、誰よりも悩み苦しむ彼の姿に苛立ちを覚える。
しかし、そんな彼に惹かれ近づいてしまう己が一番理解できないものだった。
ああ…また意味のわからないものに…
キンブリーとロイは仲が悪いと思います。
でも、お互いどこかで惹かれる部分があるんじゃないかと…
難しかった、です…(遠い目)