6.「傷つけないで!」 ―エド×ロイ前提アル+ロイ―
赤いコートを身に纏った兄の後に続き、鎧姿のアルフォンス・エルリックは東方司令部指令官の執務室へと足を運んだ。
東方司令部への道中、兄のエドワード・エルリックは上司に当たるその執務室の主への不平不満をぶつぶつ呟き、司令部へ行くことを渋っていた。
しかし、執務室に向かう兄の足取りは速い。
いつものことながらそんな兄に苦笑を禁じ得ない。
もっとも彼の表情が変化するなどと言うことはないのだが…
しっかりとした造りの扉の前で二人は足を止める。
兄が一呼吸を置き、ノックをする。
「入りたまえ。」
よく通る男性の声が答えた。
「よぉ、久しぶり。」室内に二人が足を踏み入れる。
部屋には彼一人しか居ず、彼の優秀な副官の姿はない。
「今回の旅で何か収穫はあったかね?」
「どーせあんたのことだ。オレたちのする事なんかお見通しなんだろ?」
「君は目立つからね。小さいのにな…」
にこにこと楽しげな表情で答える彼。
兄がつかみかからん程の勢いで「誰が目に入らないほどのウルトラどチビだー!」などと喚き散らしている。
相変わらず楽しそうにそれを眺めている彼に代わり、弟のアルフォンスが兄を宥める。
「まあ、元気そうでなによりだ。」
事態が落ち着いた頃に彼がそう零す。
なんだかんだ言っても彼は自分たち兄弟を見守り、安否を気遣ってくれる。
それがアルフォンスもエドワードも嬉しかった。
唐突に穏やかな空気を乱すノックの音が響く。
何かを彼が応える前に扉が開かれ、緊張した面もちの彼の副官が入ってくる。
彼女は二人に形ばかりの会釈をし、上司の元へ向かう。
「大佐……――、……――」
途切れ途切れに聞こえる二人の会話
兄弟は顔を見合わせ首を傾げる。
急ぎ足で部屋を出る彼女を見送りつつ、彼もまた立ち上がる。
「なんかあったのか?」
問いかけても彼は笑んで、首を横に振る。
「大したことじゃない…一応様子を見に行ってくるがね。」
兄の表情が曇る。固く握りしめた手が微かに震えている。
「オレたちは手伝う事とかないのかよ?」
彼から返ってくる言葉はわかっている。それでも聞かずにはいられない。
そんな兄の姿が寂しそうに見えた。
「君たちは君たちがやるべきことをすればそれでいい。」
微笑みながら返される言葉はやはり予想通りのものだった。
彼の優しさ、それが兄の心に爪をたてる。
「傷つけないで!」
思わずアルフォンスは心の中で叫ぶ。実際に声にも出そうになった。
声に出さないでいられたのはおそらく彼の思いもわかるからなのだろう。
アルフォンスは戸惑いを抱えつつ、二人を交互にを見つめる。
兄はただ無言で拳を震わせていた…
彼は優しい眼差しで兄弟を見ていた…
「折角来てくれたのにすまないな…お詫びとしてそこにある書物を貸し出してあげよう。ではな…」
指さされたデスクの一角に何冊かの本が積み重ねられている。
二人が探し回っていた本だ。嬉しいはずのそれも今は反対に兄の傷を広げるだけだった。
立ち去る彼の後ろ姿を見やる兄の表情はどこか悲しそうなものであった。
兄が望むのは彼に守って貰うのではなく、彼を守るということ。
でも、彼は兄をいつまでも庇護しようとし、そしてさりげなく援助の手を差し伸べる。
その優しさが兄の心を傷つける。
アルフォンスはそんな兄を見ているのが辛いのだった…
やっと出来ました。
難しいお題でした。結局、音として話してはいないですね。
アルの視点からエドとロイの思いのすれ違いを見て、といった形なのですが…
ちなみに、この作品は会社で昼休みに打ちました、携帯で…
PCを勝手に使うわけにはいかない上に仕事が忙しくメモ帳に書く暇もないので…
ちまちま携帯で打って、それをPCへ送りワードにコピー貼り付けして修正。
まあ、大して修正してませんが…
次のお題も携帯でちまちま打ちますよ。