寝顔

久しぶりに訪れた東方司令部。
穏やかに見えて慌しい司令部内の雰囲気は相変わらずであった。
廊下を歩きながら親友の部下と遭遇し、挨拶を交わした。
親友は己の部屋に居るとのこと。
仕事は一段落し、休憩のはずだと彼女は言った。
改めてヒューズは奥に位置する執務室に足を向けた。
辿りついたドアの前に立ち、僅かに逡巡した後、珍しくコンコンと軽いノック音を響かせる。
が、一向に返答はない。
もう一度ノックをしてみてもそれは変わらなかった。
「なんだ、居ねぇのか?」
首を傾げながらドアに手をかけそっと開く。
鍵はかけられていず、あっさりと開いた。
中を覗きこんでみると窓の前に置かれたデスクに突っ伏している人物を見付け、思わず笑みが零れた。
なるほど、返答がないわけだ。
背後から差し込む日差しは暖かく、心地良い眠りの中に居るのだろう。
ヒューズは部屋の中に足を進め、静かにドアを閉める。
「ロイちゃーん?」
小声で呼んでみても伏せっている親友はぴくりとも動かず、密やかな寝息を立てるばかりだった。
ヒューズは部屋の中央に配置されたテーブルやソファを通り過ぎ、親友の眠るデスクの前で足を止める。
彼の突っ伏しているデスク上には紙の束や書籍、走書きされたメモなどが散乱していた。
「なんだこりゃ…」
仕事は一段落したと聞いた。
では、何故まだこんなに散らかっているのか…
不思議に思い、ヒューズは開いたままの本を一冊手に取ってみる。
パラパラと簡単に眺めてみると、ヒューズには全く理解できないような構築式がびっしりと敷き詰められていた。
どうやら仕事とは別に調べものをしていたらしい。
普段は軍人らしさを漂わせているが、彼はやはり錬金術師だ。
士官学校の頃から知識に貪欲なまま。
ヒューズは本を閉じ空いている場所へ置き、散らばっている紙やメモをまとめ本に重ねる。
先程より片付いたデスクに寄りかかり、親友の寝顔を眺める。
彼の寝顔はベビーフェイスに拍車をかけ、あどけなく見えた。
ヒューズが手を伸ばし前髪をすくとさらさらと指の間から流れ落ちた。
それでも起きないのはそれほどまでに疲れているのか、それともヒューズに心を許しているからか…
安心しきった穏やかな寝顔は後者に思える。
「お疲れさん…」
ヒューズは柔らかく笑み、彼の頬に口付けを落とした。

 


仕事中に携帯でぽちぽちと執筆しました…(こっそりと)
ほのぼのとした感じが出ていればいいです。
あ、こんなですが一応ヒュロイのつもり…

(05.12.13〜07.07.15)
↑どれだけ放置…