もしも――
「――なあ、鋼の。もしも、私とアルフォンス君が崖から落ちて……どちらか一方だけしか助ける事が出来ないとしたら、君はどちらを助ける?」
「は、何それ?」
静寂を破った唐突過ぎる質問はエドワードを呆気に取らせるのに十分だった。
東方司令部司令官執務室。
エドワードは数時間前からソファを陣取り、取り寄せたばかりの文献を読んでいた。
部屋の主であるロイはロイで、山積みになっていた書類を真面目に処理していたはずだった。
実際、先刻まで本のページを捲る音と、書類に走らせられるペンの音だけが響いていた。
その均衡を破った脈絡のないロイの問いかけにエドワードは怪訝な表情でロイに視線を送る。
「いや、だからだ。私かアルフォンス君、どちらしか助けられないとしたら君はどうする?ああ、どちらもは無しだぞ。」
エドワードは更に眉間に皺を寄せた。
くだらない、と一蹴してやろうかと思ったが、やめた。
それは意外にも、問いかけるロイの瞳が真剣みを帯びた色をしていたから。
エドワードは溜め息を一つつき、手元の本を閉じる。ロイの問い掛けについて、数瞬考えを巡らす。
暫くの沈黙の後ゆっくりとエドワードは口を開く。
「オレは……アルを助ける。」
「……」
ロイはエドワードの言葉に耳を傾けているだけだった。
その表情からはなんの感情も窺えない。
「で、アルを助けたらオレはあんたを追って崖から落ちる。」
更にエドワードは続けた。
「何の為に…?」
「あんたと一緒に居る為。」
きっぱりと言い切ったエドワードに対し、ロイはぽつりと呟きを零す。
「そうか。それが君の答えか……」
判った、とだけ言葉を残し、ロイは書類処理の手を再び動かし始めた。
エドワードはそんなロイをじっと見つめ続けていた。
もしも、ロイとアルフォンスが崖から落ち、どちらかしか助けられないとしたら――
エドワードはアルフォンスを助ける。
己の腕を犠牲にしてでも救いたかった大切な大切な弟なのだから。
そして、助けた後にロイを追い、崖から落ちる。
もしかしたら、彼と自分とが力を合わせれば助かるかもしれないから。
たとえ、助からなかったとしてもロイ一人で死なせはしない。
エドワードも一緒に逝くのだ。
何にせよ、エドワードはロイを見捨てる事はないのだと……
ロイとアルフォンスのどちらかしか助けられないとしたら……
なぜかそれに悩んでしまいました。
私のところのエドは絶対にアルを助けるでしょう。
でも、ロイを見捨てる事も出来ない。
なら、どうするだろうかと――
実はまだ悩んでます。
2005.06.17 ブログUP
2007.10.23 訂正